月夜の判然

適度に適当に長い文を置いておく場所です

【ネタバレあるよ】ファミレスを享受せよ 感想のような何か

Switch版が出ると聞いて、心の片隅でずっと気にかけていた『ファミレスを享受せよ』。ついに配信されたので遊びました……とてもよかった……!!

 

☆どんなゲーム?

www.wakuwakugames.com

 

『ファミレスを享受せよ』はコマンド選択式のアドベンチャーゲームです。
どんなゲームかはリンクを載せたわくわくゲームズの説明ページに全部書いてあるので、そちらをご覧ください。特に事前情報を知らなくても、ゲーム画面の雰囲気にピンとくれば十分楽しめると思います。たぶん…

うん、そうだね…

とてもよかったので、感想のような何かでも書き残しておこうと思います。当たり前のようにネタバレをしますので、今絶賛ファミレスを享受している方や、これからファミレスを享受する予定の方は、終わってから覗いてみてください。

 

 


☆じたばたしない、アドベンチャーゲーム

永遠のファミレス『ムーンパレス』に閉じこめられた主人公。閉じこめられたからには脱出しなければ…と思うのが人間…いや、ゲーム好きの定めみたいなモノでしょう。私も無い知恵絞ってがんばろうと思いましたよ、最初は。でも…先客との会話も雑談、解き方がダイレクトに書いてある(言ってもらえる)仕掛け、ノーヒントどころか総当たりが正解だったパスコード…このゲームは『まぁ…とりあえず飲み物でも飲んで、月でも眺めて話そうよ…』と、いい感じにぼやかして、このファミレスから脱出しようとじたばたする気持ちを丸め込んでくるのです。
しばらくこのゲームに浸かればもう…出なくてもいいんじゃないかな…という気持ちに…なってきてる自分がいる…なんだかとても不思議な気分でした。
でも…そういう気持ちになった途端に、ふとしたきっかけで、最終的には出ることになっちゃうんだよな……ゲーム内で永遠にも近い時間を過ごした主人公達と、数時間画面の向こうで彼らの雑談を見ていた私。フランクにファミレスを出た主人公達と、ファミレスを出るのを惜しむ気持ちになる私。それぞれの過ごした時間に対する気持ちの湿度が微妙に違う。でもそれがとても心地よいわけで……

いいんじゃないかな…

 

☆すぐそこの遠い場所、永遠のファミレスにて

深夜のファミレスから永遠のファミレスへ。同じようなファミレスでもこの永遠のファミレスはドリンクバーはあれど食べ物は出てこない。というか、メニューも無い。そもそも外の景色もなんか変、そういえばBGMが流れない時もあるような……見れば見るほど、聞けば聞くほどおかしい状況でもあるのに、なぜかとても居心地は良い…

 

☆それでいいじゃん、ただクソどうでもいい会話とドリンクの味に夢中になるんだーーー

先客の皆さんもちょっとした何かを抱えているけど、まずそれは特に見せず、主人公とささやかな雑談に興じてくれる…それもそのはず、みんな出られなくてじたばたしていたターンは、もうとっくの昔に『終わっている』のです。永遠のファミレスに溶け込む彼らの諦念のようなものが、後から来た主人公…いや、私にとって逆に居心地の良さを醸し出していたり。あくまでも諦めを越えた境地がいいのであって、やりすぎて狂気になっていないあたり、とてもバランス感覚をもった絶妙な台詞回しだなぁ~と始終感心していました。

不思議なゲームだったな…

 

とりあえず、言いたいことはこれでおしまいです。感想ってほどでもなかったよね…

 


☆あることないこと、キャラクターについての所感

2種類のエンディングとイラストギャラリーを楽しんだので、せっかくなのでキャラクターについてなんか書いておこう…個人の所感なので悪しからず。

◎主人公
永遠のファミレスに訪れるのが必然…というほど重要な何かがあったわけでもなく…でも、彼女が来ていないとここは丸く収まらなかっただろうな…となる存在感。最後に名前がわかるのがちょうどいい塩梅というか。ちょっとぐいぐいくるタイプだけど、極めて普通な人物かな…と思いきや、途方もない総当たりを行ったり、何の勉強をしていたのかだったり…実はけっこう『風変わりな人物』なのが後からわかるのも面白いよね。

◎ガラスパン
このゲームを象徴する『あのセリフ』を発した張本人。この永遠のファミレスを体現するかのような発言をするものの、主人公と雑談に興じるあたり、なんだかんだでいい人なのである。ラテラが実在しないとわかったとき、大変な事が起こるのではないか…といった不安がよぎったものの、永遠に近い時間を過ごした彼女にとってはそれも一つの事実だったと『過去』になっていたのもよかった。このときの主人公の反応も良かったな…

◎セロニカ
なんか近寄り難い雰囲気…を一瞬感じさせるものの、主人公と雑談に興じたり、壮大なTRPGをみんなで遊んだり、なんだかんだでいい人なのである。彼の正体に驚いたものの、単にファミレスを出るだけではなくもっと先の、深いところで丸く収めるように、と話し合いの場を作るあたり、相当慈悲深いヤツなんだなぁ~と思いを馳せたくなるよね。

◎R.スパイク
2周遊んでようやく女性だと知った…(遅い)王様なのに気品と共に気さくさも兼ね備え、主人公と雑談に興じたり、なんだかんだでいい人なのである。王という器にふさわしい人なんだけど、悲しいかな王として統治するには、そこはふさわしい国じゃなかった…って感じ。クラインが望んだ姿のエンディングと、スパイクが望んだ姿のエンディング…どちらが幸せなのかは、画面の向こうで観ている我々が決める事でも無いし、なんだかどっちも幸せなのかもしれないじゃん…?と思わせられるのもいいな…

◎ツェネズ
この状況に至った一つの要因になったかもしれないけど、彼女に悪気はないし、言える事は可能な限り主人公に話そうとしている…それだけで、彼女もいい人なんじゃないかな…という気持ちにさせてくれるし、丸く収まって良かったね…と声をかけたくなる。溶けちゃった姿に本気でビビった…そりゃぁ…出られないよね…

◎クライン
回想やデータの複製でしかわからないけれど、報いを受けるだけのことはしたけれど、だからと言って『ヒドいヤツだ…』とは言い切れないし、この物語の中でも(流刑にされてるとはいえ)なにかしらの余地があるようにしてあるのが、このゲームの全体的な良さに繋がっているのかな~と思ったり。だって本当に『目的だけを果たしたい』のなら…もっと効率一辺倒にした手段を取れる才があるわけだし…

 

一日の終わりに、ひっそりと楽しむ……そして終わった後にはこっそりと誰かに話したくなるような、そんなゲームでした。遊べてよかった…!!

メチャクチャ久し振りにドリンクバーに行きました。おいしかったです。