月夜の判然

適度に適当に長い文を置いておく場所です

A Space for the Unbound 心に咲く花 感想

A Space for the Unbound 心に咲く花(以下:心に咲く花)をクリアしたので軽〜~く感想を。大きなネタバレはしないのですが、人によっては『何が起こるのか』を薄々察することができるかもしれないので、このゲームを遊ぶ予定の方は遊んでから読んだ方がいいかもしれません。前情報が無い方が面白いゲームなので。

 

 


☆どんなゲーム?

 

<紹介サイト>

chorusworldwide.com

心に咲く花はアドベンチャーゲームです。舞台は90年代後半のインドネシアの片田舎。学校に通うアトマは彼女であるラヤと一緒に学業をブッチして遊びに行きます。うんうん、青春の1ページですね。ただし、この二人にはちょっとした『不思議なチカラ』があり、それ故に世界の危機と終わりを目の当たりにすることになるのでした………という雰囲気のよくあるアドベンチャーかな〜と思ったし、遊んでいて途中までそう思っていました。ということは……

 

 

☆何なんだよこのゲーム!?ユーモアと刺激に満ちすぎている道中

 

人々の話を聞いて、おつかいしつつアイテムを集めて、事件を解決する…基本的にはよくあるアドベンチャーゲームなんですが、いろんなイベントや操作を求められて、何というか…飽きないのである。そこにいる人々の個性強めなセリフ回しや、先が気になるストーリーも相まって、時間がある限りずーーっと遊んでいました。不思議だ…

彼女と映画を観るアトマ

男なら時には拳を振るう事もある!そうだろアトマ!

時にはメシ食べながら盗み聞きをしないとな!アトマ!

 

急に裁判ゲーが始まったぞ!アトマ!

ところで…某裁判ゲーのリスペクトっぷりが妙に凄かったんだけど、なんでだろうな…??

☆ドット絵じゃなくてピクセル『アート』と呼ばないと…

 

広い空のきれいなことよ…

公式サイトでも『美しいピクセルアート』と書かれているだけあって、映像が綺麗なのである…世界の終わりなのにこんなに綺麗でいいの…?と困惑するぐらいに。このようなグラフィックはGBAで育ったキッズの自分としては『ドット絵』という認識が強かったりするんですが、アートなんだなぁ…と、心の底から感心していました。そしてリアル過ぎないこの表現が良かった理由がもう一つあるのですが…どんなに辛いシーンでもギリギリ心が押し潰されないって事です。リアルな表現だったらダメだったかも…

 

 

☆人の心は、そう簡単じゃない

 

原因を断てば解決するが…

このゲームのシステム的なもう一つのウリはアトマの持つ不思議なチカラ『スペースダイヴ』です。悩める人々の心に飛び込み、その内なる世界で悩みを解決するものであり…その『悩み』は様々な形としてでてきて、その解決方法も様々な『やり方』を要求してきます。
そうやって物語を進めていくわけですが、あるところでその実解決していなかったのでは…??と思い至る場面に遭遇します。そう、人の心って『悩みを晴らせば解決ッ!』といったそう簡単なものでは無かったのです。そしてゆくゆくはアトマ自身のあり方も問われる場面にも……かけがえのない青春、どうしようもない後悔、心に重くのしかかる痛み、直視できない恐怖…人生のちょっとした縮図の一つがこのゲームにあるのかもしれない…と、私はぼんやり思うのでした。

 

 

☆心を扱うゲームとしての純朴な誠実さ

 

実はこのゲーム、開始前にこんな注意書きが出てきます。

これもまた、必要なことなのです…

最初にコレを見て「えっ??」と驚きつつ「これは何かあるな…」と同時に気構えておりました。対象年齢も15才以上と高めですし、何か精神的にキツい描写があるんだろうな…と。
実際どうだったかはここには書きませんが、対象年齢のレーティングのアイコンだけで済ませず、この注意書きを入れたあたりに制作側の誠実さを何となく感じたのでした。(私が勝手に感じてるだけかもしれませんが…)それはこのゲームの終わり方も同じだったりします。最後の最後の答え合わせは、極論言えばプレイヤーに想像させる…こともあり得たかもしれません。でも、そうはせずにささやかに用意してくれたのも、とても優しいなぁ…と思わずにはいられませんでした。終わった後の晴れやかな気持ちは本当に凄かったです。

 

 

 

ふわっと語りましたが、苦しいけど乗り越えなければならない心の痛みを伴ってもなお、しんみりと心に沁みるゲーム体験でした。海外制作のゲームですが、世界への没入感をそぐわないセンスある翻訳も印象深いです。気になる方はぜひ。

 

結局埋められなかったリストが心残りだけど…すまねぇ、アトマ…